アレルギー舌下免疫療法

 アレルギー免疫療法は、体内に長期間かけて少しずつ毎日アレルギーの原因物質(アレルゲン)を投与し、からだを慣らしアレルギーの力を弱めていく治療です。アレルギー性鼻炎、結膜炎などのアレルギー疾患に対し、対症療法と異なり根本的な治療法として効果が期待できます。もともと皮下注射による免疫療法(SCIT)がありましたが、2014年にSCITに比べて簡便で且つ副作用の少ない舌下免疫療法(SLIT)製剤が日本国内で発売され、現在スギ花粉アレルギーとダニアレルギーに対する舌下免疫療法が保険診療で行うことができます。

対象者

スギ花粉症患者、ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎の患者さん

1か月に1回、診察を受けられる方

3~5年の長期間治療を続けられる方

 すべての重症度と病型(くしゃみ・鼻水型、鼻づまり型どちらも)に対して推奨されています。特に薬物療法や手術療法などで症状が十分コントロールできない患者さん、薬物療法で薬物の減量を望む患者さん、薬物療法で望ましくない副作用が現れる患者さんにお勧めします。

 現在、日本では1月~3月が受験シーズンとなり、スギ花粉が飛散する時期と一致します。花粉症により受験時に十分なパフォーマンスを発揮できない可能性があり、それを見越して12~16歳時に始められる方もいらっしゃいます。

 使用する薬剤

スギ花粉舌下免疫療法:シダキュア®

ダニアレルギー舌下免疫療法:ミティキュア®

 2014年に舌下免疫製剤が発売された当初はスギ花粉に対する液体の剤形のみでしたが(シダトレン®)、その後錠剤タイプの薬が開発され(シダキュア®)、投与法、保管方法がより簡便になり、適応年齢も拡大されました。舌下錠はラムネのように口の中で溶けるお薬です。2019年でシダトレンの販売は中止され、スギ花粉における舌下免疫療法はすべて舌下錠であるシダキュアに移行しています。

 ダニアレルギーに対する舌下免疫療法製剤は舌下錠のみで、シダキュアと同じ鳥居薬品のミティキュア®と、塩野義製薬から発売されているアシテア®があります。スギ花粉製剤は日本国内で開発されましたが、ダニアレルギー製剤は海外治験を参考に用法用量が決められた経緯もあり、スギ花粉製剤と比べてアレルゲンの用量が多く設定されています。さらにミティキュアとアシテアを比べると、ミティキュアが投与導入期3,300JAU、維持期10,000JAUというアレルゲン量に対し、アシテアは導入期19,000JAU、維持期57,000JAUとアシテアのアレルゲン量が5倍以上多いです。

 アレルゲン量が多いから良いとは必ずしも言えず、もともとダニアレルギー舌下免疫療法はスギ花粉舌下免疫療法に比べ副作用が出やすく、国内外の臨床試験においてミティキュアと比べアシテアの方がやや口腔内副作用の頻度が多いこと、ミティキュアとアシテアを比較して治療効果に差があるとの報告がないこと、ミティキュアの方が導入期から維持期への移行が簡易であることなどから、当院ではミティキュアを使用することが一般的です。

治療を受けられない方(禁忌)

舌下免疫療法によりショック(血圧の低下による重篤な副作用)を起こしたことのある方

重症の気管支喘息患者さん 投与により喘息発作を誘発する恐れがあります。

治療を受ける際、注意が必要な患者さん(慎重投与)

アレルゲン免疫療法やアレルゲンエキスによる診断・治療でアレルギー症状を発現したことのある方

気管支喘息の患者さん 喘息発作を誘発、重症化をおこす恐れがあります。

小児 5歳未満の小児に対する安全性は確立されていません。しかし、低年齢での早期介入によるメリットも大きいと考えられるため、投与が正しくできるのであれば年少者にも投与可能となっています

高齢者 一般に、高齢者では免疫機能、生理機能が低下しているため、十分な治療効果が得られない可能性、副作用が重篤化する可能性があり注意が必要とされています。(当院においては70歳以上の方でも特に副作用なく、かつ治療が著効しスギ花粉シーズンでも薬物療法が不要となった症例を経験しています。)

妊産婦、授乳婦 妊娠が分かっている方、授乳をしている方には開始しません。治療中に、途中で妊娠が判明した方は慎重に経過を見ながら投与継続をします。

全身性ステロイド薬投与中の患者さん 免疫が抑制されるため、免疫療法の効果が得られない可能性があります。

ほかのアレルゲン免疫療法と併用する患者さん 副作用のアレルギー反応が増加する恐れがあり注意が必要ですが、スギ花粉とダニアレルギーの舌下免疫療法を並行して行うことは可能です。当院ではスギ花粉舌下免疫療法とダニアレルギー舌下免疫療法を併用している患者さんが複数名いらっしゃいます。2種の治療を希望の方は、まず一方を開始し、治療が軌道にのり安全を確認できたら、他方を慎重に開始していきます。

β遮断薬服薬の患者さん 重篤な副作用が発生した際に投与するアドレナリンの効果が十分発現しない可能性があります。

三環系抗うつ薬及びMAO阻害薬服用の患者さん 重篤な副作用が発生した際に投与するアドレナリンの効果が増強される可能性があります。

重症の心臓疾患、肺疾患、高血圧症の患者さん 重篤な副作用が発生した際に投与するアドレナリンにより症状を悪化させる可能性があります。